『曽根の神幸祭』の概要
文政2年(1819年)に始まり、2018年に200周年を迎えた『曽根の神幸祭(そねのじんこうさい)』。正式には(文化財としての名称)『曽根の神幸行事(開作神事)』です。(以下『曽根の神幸祭』と表記します。)
約二週間の期間に渡り、お祭りの行事が行われます。その間「提灯山」「幟山」「人形飾山」へと三変化する、北九州市内では唯一のスタイル。
「市指定無形民俗文化財」として、平成19年3月30日に北九州市より指定されています。
『曽根の神幸祭』の歴史
『曽根の神幸祭』の始まりは文政2年(1819年)。
隣接する「猿喰新田(さるはみしんでん)」を干拓した、北九州市の偉人の一人「石原宗助」が尽力し、享和3年(1803年)に「曽年新田(そねしんでん)」が竣工しました。しかし文化14年(1817年)の暴風雨で未曾有の被害を受けてしまいます。
そこで、「曽根新田」の鎮守として「綿都美(わたつみ)神社」を造営し、文政2年(1819年)に五穀豊穣(ごこくほうじょう)、風鎮汐留(ふうちんしおどめ)祈願の大祭を行なったことが『曽根神幸祭』の始まりとされています。
そのようなご縁もあり、今でも最終日の「神幸祭」には、「猿喰新田」の代表者も、来賓として参加しています。
祭礼は毎年4月20日から5月3日まで開催され、曽根新田、上曽根、朽網東、朽網西、中曽根、中曽根東、下曽根の7地区から山が参加し、独特のスタイル、その華麗な姿を今に伝えています。
山車の形態
祭礼期間中に「提灯(ちょうちん)山」「幟(のぼり)山」「人形飾山(かざりやま)」へと姿を変える独特のスタイル。北九州市内でこのように三変化する山笠は、ここ『曽根の神幸祭』だけです。
同様のスタイルは、隣接する福岡県苅田町の「苅田山笠」に見られ、その伝播に関して大変興味深いところです。
「苅田山笠」は1442年に始まった500年以上の歴史を誇る祭礼で、現在のような鉾山が出たのが1597年とのことで、江戸時代以前の豊臣秀吉が生きていた時代です。三変化のみならず、それぞれの姿もかなり似ています。お隣の町ですので、何らかの交流があったのでしょうね。
ちなみに『曽根の神幸祭』も以前は「人形飾山」ではなく、「苅田山笠」と同じように「岩山」だったそうです。
山笠の最上部には「バレン」と呼ばれる色鮮やかな飾りがあります。
これは穂先を模したものと言われています。
同じく「バレン」が見られるお祭りでは、福岡県五大祭の一つ「田川川渡神幸祭」が有名です。
こちらも祭の始まりは、永禄年間(1558年~1570年)と言われており、「バレン」の起源が気になります。
そして同じく北九州市内に似た感じの「バレン」を飾る山笠があります。それは曽根とは北九州市内で一番距離がある若松区の「二島(ふたじま)祇園山笠」、「竹並(たけなみ)祇園山笠」、「脇田(わいた)祇園」です。
いずれの「バレン」も『曽根の神幸祭』、「田川川渡神幸祭」、「苅田山笠」のものとは少し違っていて、色鮮やかな三角の紙を、混ぜて使っています。
それにしても、『曽根の神幸祭』と若松の途中に位置するお祭には、「バレン」を見ることがないのですが、若松の山笠に見られるのはとても不思議な感じがします。
お祭りの日程
『曽根の神幸祭』は約二週間に渡って執り行われます。
4月20日〜25日は「提灯山」として各地区で巡行されます。
4月29日に行われる「潮かき」では「幟山」に変わります。
最後は華やかな「人形飾山」へと変わり、各地区での運行や、各地で飾られています。
そして5月3日に行われるクライマックスの神幸祭では、7地区の全山が「綿都美神社」に勢ぞろいします。
神幸祭の時間は12時、早いときは11時台には、「綿都美神社」に山車が集まり始めます。
各地区ごとに「バレン」の色や、人形などが違います。
「綿都美神社」の境内へ向かいます。
山車は大きいので、上部を倒して運行されます。
そして境内で山車の上部を立て、「バレン」を開きます。
境内では神楽の奉納なども行われ、出店もあり、賑わっています。
「わっしょい百万夏まつり」への参加
北九州市民にはおなじみのお祭り「わっしょい百万夏まつり」。北九州各地の主なお祭りが集まり、大変賑わうお祭りです。
「お祭り大集合」が開催されるのは、例年8月の最初の土曜日。
ここ数年、『曽根の神幸祭』からも一基の山が参加しています。北九州市の中心地で、その大きさ、華やかさを目の当りにすることができます。
ぜひ地元で祭の素晴らしさを感じて下さい
とはいえ、やはりお祭りは、地元で味わってこそ、その素晴らしさを実感できます。
「わっしょい百万夏まつり」の「お祭り大集合」は夜に開催されるため、色鮮やかな『曽根の神幸祭』の山車の華麗さが、今ひとつ伝わりにくいです。しかも一基だけでは、あの華やかさも実感しにくいですね。
他のお祭同様に、ぜひ『曽根の神幸祭』も地元でお楽しみいただけたら幸いです。
なお、綿都美神社には駐車場がありませんので、JR朽網駅から歩くか、最寄りのバス停をご利用下さい。