北九州市は祭りの街。夏に各地で行われる「祇園」と呼ばれる、大きなお祭りが市内で20箇所以上も開催されます。
その中でも市民に一番人気なのが、戸畑区で開催される『戸畑祇園大山笠』。2016年にはユネスコによる世界文化遺産登録も果たした、北九州の誇り、宝とも言えるお祭りです。
戸畑生まれの戸畑っ子である私が、戸畑祇園大山笠の魅力、見どころについて、まとめさせて頂きたいと思います。戸畑祇園大山笠への思いが強いので、少し冷静になりながら、初めての方でも分かりやすいように、ポイントをお伝えできればと思います。
戸畑祇園大山笠の概要
戸畑祇園大山笠は、北九州市戸畑区で、毎年7月の第4土曜日を挟んだ3日間に開催されるお祭りです。
4つの地区「東」「西」「中」「天」
戸畑祇園大山笠は、4つの地区「東」「西」「中原(なかばる)」「天籟寺(てんらいじ)」で開催されます。
ゆえに祭りで着る法被、そして提灯等にはそれぞれ「東」「西」「中」「天」の文字が記されています。
そして『戸畑祇園大山笠行事』は、「飛幡八幡宮」(「東」「西」)、「中原八幡宮」(「中原」、「菅原神社」(「天籟寺」)三社の夏祭りで、御祭神であるスサノオノミコトをお乗せして山笠を運行しています。
大山笠、小若山笠
4地区それぞれに、高校生以上の大人が担ぐ「大山笠」、中学生が担ぐ「小若山笠」が、各1基ずつあり、戸畑っ子は山笠のことを一般的に「山(やま)」と読んでいます。また祭りのことを「祇園さん」とか「山」、「提灯山」などと呼んだりします。
迫力ある大山笠の担ぎ手
初々しく、元気いっぱい、中学生の担ぐ小若山笠
また戸畑区の町内には「子供山笠」もあります。かつて戸畑の街が繁栄していた時期は、戸畑区内に100近くの子供山笠がありましたが、今では子供の数も減ったため20以下になっています。それでも、祭りの期間中は、戸畑全体が盛り上がります。
昼夜でその姿を替える戸畑祇園大山笠
戸畑祇園大山笠の特徴として、昼夜でその姿を替えることです。それを「姿替え」と呼んでいます。
豪華絢爛な昼の姿と、「光のピラミッド」と称される夜の姿。このように昼夜で姿を変える祭りは全国的には稀です。(詳しくは後ほど)
中日(なかび)が競演会
3日間行われる戸畑祇園大山笠のクライマックスとも言えるのが、中日(なかび)である土曜日に開催される「戸畑祇園大山笠競演会」です。
金、日曜日は各地区での運行ですが、この日だけは4つの地区の大山笠、小若山笠、合計8基が揃い、その勇壮な姿、運行を競い合います。
初めて、戸畑祇園を観るなら、土曜日がおすすめです。
国の重要無形文化財、ユネスコの無形文化遺産
昭和55年(1980年)に、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
そして平成28年(2016年)には、ユネスコの無形文化遺産に、全国の33件の「山・鉾・屋台」の構成行事として、認定されました。
これにより戸畑、北九州、福岡、日本から、世界の戸畑祇園大山笠へと、その名がさらに知られることとなり、北九州市民、とりわけ戸畑っ子である者として、大変誇らしく思います。
なお、平成26年(2014年)には、日本夜景遺産にも認定されています。
福岡県夏の三大祭
戸畑祇園大山笠は、同じく北九州市の「小倉祇園太鼓」、そして福岡県福岡市の「博多祇園山笠」と共に、「福岡県夏の三大祭」に数えられています。
また、戸畑祇園大山笠は、小倉祇園太鼓、黒崎祇園山笠と共に、「北九州夏の三大祭」とも呼ばれています。
当番山
4つの地区が、毎年持ち回りで「当番山」となります。
当番山は、戸畑祇園大山笠の各種行事の主導的な役割のみならず、北九州市の主要なお祭りが集まる「わっしょい百万夏まつり」での運行、その他、対外的な行事などへの参加など、戸畑祇園大山笠の発展のための、大変重要な務めとなります。
女人禁制
戸畑祇園大山笠は女人禁制です。これは山笠を担ぐ人だけでなく、祭り期間中に各神社に作る「宿」の運営も男だけで行われています。
そこで「山」が好きな戸畑の女性たちで開催される、女性だけの山「ヨイトサ祭り」が毎年8月に開催されています。
戸畑祇園大山笠の歴史
八幡神社(はちまんじんじゃ:現在の飛幡八幡宮)の記録によると、江戸時代の後期にあたる享和2年(1802年)、当時の戸畑村に蔓延した疫病退散を、神社に祈祷し、それを収めた。
翌年の享和3年(1803年)に、須賀大神(スサノオノミコト)へ感謝の意を込めて、山笠を奉納したのが起源とされている。
途中、戦時中に中断したものの、200年以上に渡って、その伝統を受け継ぐ、由緒正しき神事です。
戸畑祇園大山笠の見どころ
数々の魅力にあふれる戸畑祇園大山笠ですが、その見どころについて、お伝えさせて頂きます。
担ぎ手の力だけで担ぎ上げる
戸畑祇園大山笠は、担ぎます。人の力だけで担ぎ上げる、いわゆるお神輿のようなスタイルです。
しかし重さが違います。2.5トンにも及ぶ巨大な山笠を、担ぎ手の力だけで担ぎ上げて、運行する。だからこその迫力、気力を感じる、勇壮な祭りです。
80人で担ぐとしたら、一人当り30キロ以上が肩にかかっている計算となります。
「ヨイトサ、ヨイトサ」の勇壮な掛け声
戸畑祇園大山笠の基本となる掛け声は「ヨイトサ」です。
この「ヨイトサ、ヨイトサ」の掛け声を合わせて、巨大な山笠を担ぎ上げ、運行します。
昼夜で姿を変える戸畑祇園大山笠
戸畑祇園大山笠の特徴として、お昼と夜の姿が違うということを冒頭でお伝えしましたが、これは戸畑祇園の大きな魅力です。
お昼は、大きな12本の幟と、豪華絢爛な幕類や装飾を纏った、勇壮な「幟山笠」。
そして夜は、12段309個の提灯が美しい「光のピラミッド」と称される「提灯山笠」。
どちらも素晴らしい山笠ですが、戸畑っ子はお昼の「幟山笠」が好きな人も多く、ぜひ昼、夜、両方の山笠を堪能して欲しいものです。
勇壮な幟山笠
夜の提灯山笠とは対称的な、お昼の「幟山笠」。
大きな12本の幟、そして前方の「前花」と、後方の「見送り」が男らしく、神々しい山笠です。
なお、各地区ごとに後方の「見送り」の絵柄が違っていますので、こちらもお楽しみ下さい。全て刺繍で、大変貴重なものです。
豪華絢爛な幕類
幟山笠の装飾の中でも、特に貴重なのが、「幕類」。(写真は西大山笠の幕類です)
明治時代に制作されたものが大半で、中には江戸時代に作られたものも現存しているそうです。これらは福岡県指定有形民俗文化財に指定されています。
この幕類を纏ったお昼の「幟山笠」は、走る文化財と言える、貴重な山笠でもあります。
幕類の他にも、幟山笠の装飾の数々にも、ぜひご注目下さい。
心揺さぶられる戸畑祇園囃子(とばたぎおんばやし)
戸畑祇園大山笠を彩る「音」。それは各山の「囃子方(はやしかた)」と呼ばれる方々が奏でる、素晴らしいお囃子、「戸畑祇園囃子(とばたぎおんばやし)」です。
太鼓、鉦(かね)、合せ鉦、笛、という昔ながらの楽器で演奏されるお囃子に、戸畑っ子のみならず、観る者を感動させます。
囃子方は、通常、山笠の中で終始演奏を行っています。担ぎ手もですが、囃子方の皆さんのご努力も大変なものです。
山笠運行の際に演奏される「おおたろう囃子」が特に有名ですが、それ以外にも「居神楽(いかぐら)」「獅子舞(ししまい)」「大上り(おおのぼり)」「大下り(おおくだり)」など、神事などの状況、場面で、演奏される囃子にも注目して頂きたいと思います。
各地区で、微妙に違っていたり、無い曲もあったりと、その違いもぜひお楽しみ下さい。
戸畑祇園大山笠の公式ホームページでサンプルを聴くことが出来ますので、ぜひご確認下さい。
手に汗握る「五段上げ」
お昼の「幟山笠」の装飾をすべて取り外し、そこに4本の柱を立てたら、いよいよ夜の姿「提灯山笠」への姿替えの準備完了です。
まず最初に行われるのが、戸畑祇園大山笠の見どころの一つとして挙げられる「五段上げ」です。
提灯山笠の上から五段分の提灯が、下から上に上げられ、まずはそれを4本の柱に固定するのですが、これは大変な技術と修練が必要で、簡単な事ではありません。
観客も、もちろん山関係者も、ハラハラ・ドキドキしながら、この「五段上げ」を見守ります。そして「五段上げ」で最上部が固定されると、一気に12段の提灯山笠が組み上げられます。
このスピードも見どころで、ここのところ、「西大山笠」が圧倒的なスピードを見せています。
華麗な「光のピラミッド」提灯山
こうして組み上げられた12段309個の提灯を纏った「光のピラミッド」提灯山笠は、勇壮、華麗にして、かつ優雅な姿です。
高さ10mの「提灯山笠」は近くから見たら、その巨大さに驚くばかりです。10mといえば3階建てのビルよりも高いわけですから、それは迫力あるはずです。
なお提灯の中は全てロウソク。電飾ではありません。ですので、傾いたりすることで、提灯が燃えることもしばしば。その時はすぐに中にいる方が交換します。
戸畑祇園大山笠のお祭りの流れ
お祭りの準備は6月から行われますが、観客として参加するのは、7月の第4土曜日を挟んだ3日間。
金曜日、日曜日は各地区での運行となりますが、土曜日は4つの地区が全て集まり、競演会を開催します。
最大のみどころ戸畑祇園大山笠競演会当日の流れ
初めてご覧になる方は、まずこの「競演会」をオススメします。
戸畑祇園大山笠の魅力が詰まった、競演会の一日を追ってみます。
神移し、大下り
各山は、各神社で神事を行います。「中原」「天籟寺」は午前中から神事を行い、「東」「西」は午後から始めます。
初めてご覧になるなら、競演会会場でもある戸畑区役所前の、すぐ側にある飛幡八幡宮で「東」「西」の山笠が到着するのを待たれたら良いと思います。
お昼時には到着しています。
お汐井汲み(おしおいくみ)
神事が済むと、若戸大橋のたもと、戸畑渡し場にある「お汐井汲みの場」に移動しますので、ぜひ着いていきましょう。といっても、速いので、そのつもりで。ちなみに飛幡八幡宮からの距離は、約1.5kmです。
「東」「西」、そして「天籟寺」の大山笠、小若山笠が集合します。
なお、「中原」は地元の「中原先の浜」で、お汐井汲みをします。
ここでは神主さんにより、幟山笠や関係者に汲んだ海水をかけ、お祓いをします。
お汐井汲みが済むと、競演会の会場である、戸畑区役所前の浅生(あそう)第一公園に移動します。
幟山笠が競演会会場に勢揃い
お汐井汲みの済んだ各山笠が、会場に勢揃いします。
勢揃いした姿にワクワク感が高まります。
開会式、お囃子披露
開会式、各山の囃子方によるお囃子の披露が行われ、お祭りの気分が高まって来ます。
なお、その年によって、ゲスト団体によるパフォーマンスなどが、開会式前に開催されます。
幟山笠運行
開会式に続いて、「運行開始」の号令により「幟山笠」の運行開始です。
まずは戸畑祇園大山笠振興会会長を先頭に、勇壮な「幟山笠」の勇姿を目にすることが出来ます。
人力で巨大な山笠を担ぎ上げるので、時として左右に大きく揺れます。これもまた『戸畑祇園大山笠』の魅力です。
また、この時間はまだ明るいので、担ぎて一人ひとりの表情を観ることも出来、それもまた「幟山笠」の魅力です。
小若山笠も元気に運行しています。
このように囃子方の姿を観ることが出来るのもまた「幟山笠」ならではです。
ぜひしっかりと「幟山笠」の勇姿を、目に焼き付けて下さい。
そして、運行を停止し「幟山笠」の装飾を全て取り外し、「提灯山笠」への姿替えの準備が始まります。
五段上げ
いよいよ『戸畑祇園大山笠』の見どころである、「五段上げ」の準備が始まります。(写真は各山笠の五段上げ準備の様子をミックスしています。)
まずは4本の柱を立てます。1本が4m程です。
しっかりと固定します。
慎重かつ、スピーディーな作業が求められます。
準備が整い、五段上げの時を待ちます。
いよいよ五段上げです。ここのところ、圧倒スピードを誇る西大山笠の五段上げの様子です。(写真は2016年の競演会時のものです。)
綺麗にまっすぐ上げられているのが分かります。
五段が固定されるやいなや、6段目からの提灯が、電光石火のごとく、上に運ばれます。
あっという間の完成。
そして姿替えが済み、囃子方のお囃子の演奏。担ぎ手たちは、それを座って聞き、運行の時を待ちます。
提灯山笠運行
「提灯山笠」に姿替えをした大山笠、小若山笠、各4基の計8基による、競演です。
勇壮かつ優雅な「提灯山笠」の魅力を堪能する、至福の時間です。
提灯大山笠の自由競争
そしてクライマックスは、大山笠4基による「自由競争」。各山の意地をかけた迫力ある運行に鳥肌が立ちます。
写真だけでは伝わりにくいので、私がスマホで撮った動画ですが、良かったらご覧ください。担ぎ手に混じっての撮影ですので、貴重な映像かと思います。
観覧する際のおすすめスポット
戸畑祇園大山笠の競演会会場は、三角形の「浅生第一公園」。この周りを山笠運行します。ということで、観覧する場所は大きく3つに分かれます。公園の中、公園の外、そして有料観覧席です。
それぞれに一長一短です。
公園の中は、座って、下から山笠を見上げる事が出来るので、大変人気の場所です。その分、早い時間からの場所取りが必要です。公園は決して広いわけではないので、かなりの競争率となります。初めてご覧になる方には、あまりお勧めできません。
多くの方は、公園の外から観ます。山笠の運行は車道ですので、外というのは主に歩道です。それゆえ、そんなに広いところもないため、皆さんひしめき合って観ています。これも熱気が合って良いのですが、やはり初めての方にはオススメしにくいです。強いて言えば、戸畑図書館横の芝生のところは、歩道から少し下がっていて、意外と穴場です。
やはり初めて観覧される方には、有料席をお勧めしたいと思います。椅子に座って、じっくり観ることが出来るので、安心です。有料席は戸畑区役所の上、階段状の、戸畑祇園大山笠の競演会を観るために設計された建物です。
指定席は6月初旬締め切り、自由席は7月より発売ですので、お早めにお申し込み下さい。
通にオススメ「狐落とし」
戸畑祇園大山笠行事の締めくくり「狐落とし」の神事。
祭典中の山関係者たちは、狐に取り憑かれていると言われ、それを落とす神事が「狐落とし」
特に、「東」「西」の「狐落とし」は、最終日の夜に行われるため、大変神秘的で、幻想的、厳かと行った言葉がふさわしい神事となります。
23時半頃から飛幡八幡宮の境内で開催される「狐落とし」の神事の最中は、境内の照明が消され、真っ暗な中、提灯の光だけが幻想的に浮かび上がります。そして厳粛に執り行われる神事には鳥肌が立ちます。
ぜひ、観て頂きたい戸畑祇園大山笠の締めくくりの行事です。
なお、この時間帯はフラッシュ撮影できませんので、ご注意下さい。
さて、戸畑祇園大山笠についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?実はまだまだお伝えしたいことも多々有りますが、初めての方に、戸畑祇園大山笠の魅力について知って頂き、戸畑祇園大山笠競演会で、その勇壮な山笠を楽しんで頂きたいと思って、記事を書かせていただきました。
もしこの記事が、皆様のお役に立てるようでしたら、大変嬉しく思います。
更に詳しいことは、戸畑祇園大山笠の公式HPをご覧頂ければ幸いです。最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。
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北九州市には戸畑祇園大山笠を始めとして、伝統的なお祭りが各地に沢山あります。どれも魅力的なお祭りをまとめた記事を書いていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
KA-TSU
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