【大蔵祇園】御神輿による伝統的な御神幸(北九州市八幡東区)

御神輿による御神幸『大蔵祇園』

北九州市八幡東区大蔵で、350年以上の歴史を誇る『大蔵祇園』。

高低差が激しく、坂の多い大蔵地区で行われる『大蔵祇園』は、北九州市内のその他の祇園祭と違って、御神輿のみで御神幸するお祭りです。

では、『大蔵祇園』の魅力について紹介させて頂きます。

『大蔵祇園』の歴史

「八幡」の地名の由来でもあり、小倉六ケ村(尾倉、前田、大蔵、枝光、鳥旗、中原)の総鎮守であった「豊山八幡神社」。(豊山八幡神社HPより引用)

そこまでの距離が遠かった大蔵の里人が、豊山八幡宮を勘請し、大蔵村(大蔵、中河内、田代、中尾、猪倉)の産土神(うじがみ)を創建したのが、寛文2年(1,662年)8月21日。(乳山八幡神社HPより引用)

ちなみに乳山八幡神社の御由緒原文によると「小倉(尾倉)庄(尾倉村、前田村、大蔵村、枝光村、戸畑村、若松村)の宗社たる豊山八幡宮」とあり、若干の表現の差異がありますね。

いずれにせよ、1,662年に乳山八幡神社が創建されて以来、350年以上に渡って、大蔵地区で続けられている祇園祭、それが『大蔵祇園』です。その間戦争中の僅かな中断以外は、毎年続いているそうで、歴史のロマンを感じます。

御神輿を担ぐのは「乳山八幡神社 氏子青年会」の皆さん

350年の歴史の中で、担ぎ手不足など、存続の危機もあったようで、昔は牛に引かせたり、近年はトラックに乗せて運行した時代もあったそうですが、平成に入り「氏子青年会」が結成され、彼らの力により本来の姿である人の手による御神幸を、毎年行えるようになったそうです。

なお、氏子青年会とは言っても、最高齢の担ぎ手は70歳(2018年現在)。若者を凌ぐほど、とてもお元気でした。

『大蔵祇園』の開催日と時間

『大蔵祇園』は毎年7月上旬に開催されます。

8時15分頃から乳山八幡神社の本殿にて祭典(神事)が執り行われます。

祭典の間、御神輿を担ぐ「氏子青年会」の皆様は、本殿の前で整列しています。

祭典の後、本殿より御神輿を境内に出し、装飾を施します。

9時前に神社より下り、9時の花火とともに御神幸がスタートします。

帰りは13時半過ぎますので、4時間半ほどの御神幸となります。

「東巡り」「西巡り」2つのコース

『大蔵祇園』の御神幸のルートは2つあり、東側の地区を巡る「東巡り」、西側の地区を回る「西巡り」と呼ばれています。

平成10年頃までは、朝から夕方までかけて「東巡り」「西巡り」の両方のコースを回っていたそうですが、担ぎ手不足などにより、現在はどちらかのコースを、毎年交互に御神幸するようになったそうです。

『大蔵祇園』御神幸開始

花火とともに御神幸がスタートします。

子どもの山笠も、後方から御神幸のスタートを見守っています。

御神幸の先頭には赤と青(緑)の「獅子頭」。

そして旗。

太鼓と笛のお囃子が続き、一番後方が御神輿です。

また、御神幸の周りにお賽銭箱も帯同します。

まず御神幸が最初に向かったのが「勝山勝田神社」。

「東巡り」「西巡り」どちらの場合でも、まずは「勝山勝田神社」へのお参りです。

こちらで神事を執り行い、その後各町内へと向かいます。

『大蔵祇園』「東巡り」コースの様子

今年2018年は「東巡り」コースです。写真とともに振り返ります。

「勝山勝田神社」での神事を終え、御神輿は狭い道を進みます。

大蔵地区は坂が多く、いきなりの難所です。坂道に備え、御神輿にロープが結ばれます。

いざ、坂道を上ります。

ロープを引く皆さんも力が入ります。

途中、神主さんも加勢に加わりました。

まだまだ急な坂道が続きます。

坂を上った先に御旅所です。御旅所は各町内が準備し、御神幸を迎え入れます。そして神主さんにより神事が執り行われます。

そして、町内の皆様による飲み物や、果物、軽食によるご接待。

短い休息の後、次の御旅所を目指して出発です。

この時、「獅子頭」のご担当者が変わりました。これは先程の町内の方が、次の御旅所まで「獅子頭」の大役を務めることになっているそうです。

御神輿を先導する旗持ちの方は、最初から最後までこの役を務められていました。かなりの腕力を必要としますね。本当に頭が下がります。

さて、坂道が大変なのは上り坂だけはありません。下り坂も、足腰にかなりの負担がかかりますね。

各町内に設けられた御旅所の祭壇も、お供え物など、それぞれに工夫されており、見ていて楽しいです。

また、町内の方から、私まで色々とご接待頂き、何というおもてなしの心!感動いたします。

ご接待を受けた担ぎ手の皆さん、元気に次の町内を目指し御神幸です。

御神輿を見送る町内の皆さん。

ちなみに、こちらの町内ではいつもおにぎりが振る舞われるそうです。きれいな地元の水を使ったおにぎり、そしてお漬物が、とっても美味しかったです。町内の皆様、本当にありがとうございました。

この時期ですので、スイカをご用意されている町内も多かったです。本当に有り難いですね。

太鼓の叩き手も、交代しながら御神幸していきます。

御神幸も後半。続く坂道に、担ぎ手の負担もかなりのものだと思います。

先導する氏子青年会会長の声にも力が入ります。

それに応える、担ぎ手の皆さん。とても元気で明るいです。

こちらでは、そうめんのご接待。皆さん大喜びでした。

御神幸も終盤、「獅子頭」の大役を託され、気合が入っているのがヒシヒシと伝わります。

皿倉山を望む御神輿。(高見神社のそば)

時折、囃子方に混じって、笛の演奏を披露される神主さん。清らかな笛の音です。

最後の御旅所での神主さんによるお祓い。

いよいよ乳山八幡神社に「獅子頭」が戻って来ました。

最後の力を振り絞り、140段以上もある乳山八幡神社の階段を上る、担ぎ手の皆さん。

4時間半以上に渡る御神幸を終え、満足な表情の、「乳山八幡神社 氏子青年会」の皆様。本当にお疲れ様でした。

御神幸を終え『大蔵祇園』に対して感じた気持ち

今回、朝からの祭典、御神幸をご一緒させて頂きましたが、なんとも清々しい気持ちになりました。

北九州市内の他の祇園祭とは違って、決して派手な山笠や、大人数でのお祭りではないものの、長い歴史に裏打ちされた、古式ゆかしいお祭りでありました。古き良き日本の風習に出会えた、そんな感覚を覚える、素晴らしい体験でした。

そして地元の方々の、このお祭りに対する強い気持ち、信仰心などに支えられ、しっかりと伝統が守られていることを強く感じました。

このような素晴らしいお祭りの伝統が、これからも末永く続くことを、心よりお祈りいたします。また、温かく迎え入れて頂いた皆様に、心より感謝申し上げます。来年の「西巡り」もぜひお邪魔させて頂きたいと存じます。

2018年の『大蔵祇園』の様子を動画にも収めておりますので、良かったら、ぜひご覧ください。記事と合わせてご覧頂くと、お祭りの事が、よくお分かり頂けると思います。

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北九州各地のお祭りをまとめた記事です。ぜひご覧頂けると幸いです。今年のお祭りのスケジュールも分かるようにしておりますので、皆様のご見学の参考になれば幸いです。

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KA-TSU

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